【2026年以降どうなる?】暗号資産の税制改正とその背景──過去の“高額課税”から学ぶ、これからの備え方
はじめに──「利益が消えたのに、税金だけが残った」
2017年末、ビットコインをはじめとする仮想通貨(現在の暗号資産)は空前のバブルに沸いていました。価格はうなぎ登り、数百万円単位の含み益を得た個人投資家も少なくありません。
しかしその直後、相場は急落。年明けには多くの通貨が半値以下に暴落し、手元に残ったのはわずかな資産と、前年の「確定利益」に対する高額な税金の請求書でした。
「利益は消えたのに、税金だけが残った──」
このような声がSNSや税理士のもとに相次ぎ、暗号資産の税制に対する疑問と不満が一気に噴き出しました。
なぜ高額な税金が発生したのか?
暗号資産の税制上の取り扱いは、現在も「雑所得」に分類されます。これは、給与所得や事業所得などと合算されて課税される「総合課税」の対象であり、最大で55%(所得税45%+住民税10%)の税率が適用される可能性があります。
暗号資産の課税ルールのポイント
- 売却益だけでなく、暗号資産同士の交換でも課税対象
たとえば、ビットコイン(BTC)をイーサリアム(ETH)に交換しただけでも、BTCの取得価格と交換時の価格差に課税されます。 - 損益通算ができない
株式やFXと異なり、暗号資産の損失は他の所得と通算できず、翌年以降への繰越控除もできません。 - 確定申告が必要
年間20万円を超える利益が出た場合、会社員であっても確定申告が必要になります。
このような制度のもとでは、「含み益があるうちに課税され、暴落後に納税資金が足りなくなる」という事態が起こり得ます。
税制見直しの機運──なぜ今、変わろうとしているのか?
こうした課題を受けて、2020年代に入ってからは、税理士会や業界団体、さらには与党内の有志議員らが、税制の見直しを強く要望するようになりました。
特に注目されているのが、自民党の「Web3プロジェクトチーム(PT)」による提言です。彼らは、ブロックチェーン技術やWeb3産業の育成を国家戦略と位置づけ、税制の整備がイノベーション促進の鍵であると訴えています。
提言されている主な税制改正案
| 改正項目 | 現行制度 | 提言内容 |
|---|---|---|
| 所得区分 | 雑所得(総合課税) | 分離課税(20%程度)への移行 |
| 損益通算 | 不可 | 暗号資産間、他の所得との通算を可能に |
| 損失繰越 | 不可 | 最大3年間の損失繰越を可能に |
| 暗号資産間の交換 | 課税対象 | 非課税化または繰延べ課税の導入 |
| 法人保有トークンの期末評価 | 含み益に課税 | 評価課税の撤廃または実現利益課税へ |
2026年に向けて、何が発表されるのか?
毎年12月中旬に発表される「税制改正大綱」は、翌年度の税制の方向性を示す政府の基本方針です。2025年12月に発表される大綱には、暗号資産に関する以下のような内容が盛り込まれる可能性があります。
- 個人投資家向けの分離課税導入の是非
- 暗号資産間の交換課税の見直し
- 法人保有トークンの期末評価課税の撤廃
- 損益通算・損失繰越の導入
私たちはどう備えるべきか?
1. 取引履歴の整理と記録
税制が変わっても、正確な取引履歴は納税の基盤です。取引所のCSVデータは定期的にダウンロードし、損益計算ツールやスプレッドシートで管理しておきましょう。
2. 税制改正の動向をウォッチ
| 情報源 | チェック時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 財務省「税制改正大綱」 | 毎年12月中旬 | 税制の基本方針 |
| 国税庁「暗号資産FAQ」 | 毎年1月頃更新 | 実務的な課税ルール |
| 自民党Web3PTの提言 | 秋〜冬 | 政策提言・要望書 |
| 税理士・専門家の解説記事 | 通年 | 実務への影響分析 |
3. 税制改正を見越した戦略の再設計
仮に分離課税や損益通算が導入されれば、長期保有戦略や損失の活用方法も変わってきます。複数年にわたる視点で、ポートフォリオや売却タイミングを見直すことが重要です。
最後に──知識は“防寒具”、変化の風に備えよう
冬の風が吹くように、制度の変化は時に冷たく、予測しづらいものです。でも、知識という“防寒具”があれば、私たちはその風に立ち向かえます。
暗号資産の税制も、2026年以降に向けて大きく動こうとしています。その風をただ受けるのではなく、自分の足で立ち、情報という灯りを持って歩む──そんな姿勢が、これからの時代を生き抜く力になるはずです。
この記事が、あなたの備えの一助となれば幸いです。


