向かい風に背を向ける

――為替と海外投資のリアルな体験談――

「投資は自己責任」――この言葉を何度も耳にしてきました。
しかし、“為替”という見えない風に実際にさらされて初めて、その意味の重みを実感することになったのです。

■ 2020年春、円高という「追い風」をとらえて

2020年春。世界はパンデミックの混乱に包まれ、株式市場は乱高下。金価格は「安全資産」として上昇を続けていました。私はその流れに乗るべく、アメリカの金鉱株への投資を決断します。

当時の為替レートは1ドル=約100円。歴史的な円高水準でした。

「今ならドル建て資産を割安に買える」

そう考え、米国市場に上場している大手金鉱株を1株35ドルで購入。円換算で約3,500円。金価格の上昇と企業の成長を見込んだ投資でした。

このとき私が感じていたのは、まさに「向かい風に背を向ける」感覚。
日本から見れば円高は向かい風のように思えるかもしれませんが、外貨建て資産を買う立場からすれば、それは背中を押してくれる追い風だったのです。

■ 為替の風向きが変わるとき

投資後、金鉱株の株価は緩やかに上昇。1年後には38ドル前後と、約8.5%の値上がりにとどまりました。

しかし、為替の風は大きく変わりました。

  • 2021年:米国がインフレ抑制のため利上げを開始
  • 日本はゼロ金利政策を継続
  • 日米の金利差が拡大し、円安が加速

2022年には1ドル=130円を突破し、2023年には150円に迫る水準にまで円安が進行。
この為替の変動が、私の投資に思わぬ恩恵をもたらしました。

■ 株価は微増、でも円換算では+60%超

項目数値
購入時35ドル × 100円 = 3,500円
現在38ドル × 150円 = 5,700円

株価はわずか8.5%の上昇でしたが、円換算では約63%のリターン。
為替の変動が、投資成果にこれほど大きな影響を与えるとは――。
私はその力を、身をもって知ることになりました。

■ 為替の風は、視点によって変わる

この経験から学んだのは、海外投資において「為替」が極めて重要な要素であるということです。

  • 株価が上がっても、円高なら円換算で損をすることもある
  • 株価が横ばいでも、円安なら為替差益によって利益が出ることもある

つまり、海外投資とは「資産価格」と「為替レート」という2つの波を同時に乗りこなす航海。
そして、為替の風は、見る角度によって追い風にも向かい風にもなるのです。

■ 為替の基本用語をおさらい

  • 為替レート:通貨の交換比率。例:1ドル=150円なら、1ドルを得るのに150円必要。
  • 円高・円安:円の価値が上がる=円高/下がる=円安。円高は外貨建て資産を安く買えるが、売却時に円に戻すと損をすることも。
  • 為替リスク:為替変動によって投資の損益が変動するリスク。海外投資では避けて通れない。
  • 為替差益・差損:為替変動によって得られる利益や損失。今回の私は「為替差益」を得た。
  • 金利差:国ごとの政策金利の差。高金利通貨が買われやすく、低金利通貨は売られやすい傾向がある。

■ 為替の風を活かす視点

為替の動きは誰にも予測できません。
だからこそ、私はこう考えるようになりました。

  • 円高のときに外貨建て資産を買う(=追い風をとらえる)
  • 円安のときに利益確定を検討する(=風に乗って着地する)
  • 為替ヘッジの有無は、投資期間と目的に応じて判断する
  • 長期投資では、為替の波も味方にできる

重要なのは、「風を読む」のではなく、「風を活かす」こと。
為替の風を敵とせず、味方につける視点が、海外投資を成功に導く鍵だと感じています。

■ 最後に:投資は“通貨の旅”でもある

私たちは日常的に円という通貨の中で暮らしています。
しかし、世界にはドル、ユーロ、人民元など、無数の通貨が存在し、それぞれが異なる経済の風を受けて揺れています。

海外投資とは、そうした“通貨の旅”に出ることでもあります。
そしてその旅では、思わぬ追い風に背を押されることもあれば、逆風に立ちすくむこともある。

それでも私は、また旅に出るでしょう。
為替という風を感じながら、世界のどこかにある価値を探しに。


※本記事は筆者の個人的な投資体験と見解に基づいて執筆されたものであり、特定の投資商品や通貨の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあり、為替変動や市場環境の変化により損失が生じる可能性があります。投資判断はご自身の責任において行っていただき、必要に応じて金融機関や専門家へのご相談をおすすめします。

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