第4章:木を大きくさせない技術と「透かし剪定」の実践
1.表面を刈り込むだけの剪定が招く「罠」
庭木の手入れをプロの業者にお願いしていた頃、我が家のサザンカやヒイラギは、いつも決まって「表面をきれいに丸く刈り揃える」という方法で整えられていた。
職人さんが帰った直後の庭は、まるで緑の球体が並んだかのように整然としていて、いかにも「手入れが行き届いた庭」という美しい見た目になる。
しかし、この「表面だけを切り揃える刈り込み」を長年続けていると、木の内部の枝が込み合ってくる。
自分でハサミを持つようになってから、私はそのことに気づいた。
表面ばかりをパツンパツンと刈り込んでいると、外側の葉や小枝が密集し、木の内側まで日光や風が届きにくくなる。
光や風が届きにくくなった内部では、枝や葉が枯れ、枝と枯葉が「ギッシリと詰まった状態」になっていく。
外側は青々としているのに、一歩中を覗き込むと枯れた枝が目立つ。
それが、長年表面の刈り込みだけを続けてきた我が家の庭木の姿だった。
こうした状態では、病害虫にも注意が必要になる。
「こんなことになっていたとは驚いた。無駄な枝は取り除かなければ」
そう感じた私は、どの枝を取り除くべきなのかを、自分の目で少しずつ判断できるようになっていた。
それは、剪定を始めた頃にはできなかったことだった。
自分なりに剪定技術が身についてきたことを実感すると同時に、枝を間引いて光と風を通す「透かし剪定」に挑戦するきっかけにもなった。
2.時間をかけて木を整える「透かし剪定」
透かし剪定は、表面をただ丸く刈り込むのとは異なる方法だ。
込み入った枝や不要な枝を間引くことで、木の内部まで光や風が入りやすい状態をつくり、全体のバランスを整えていく。
長年、枝が込み合っていたサザンカに向き合ったときも、外側をどれだけきれいにしても内部の状態は変わらない。
そこで、太くなった枝や交差している枝などを見極めながら、不要な枝を根元から落とし、内部に光が差し込むように整理していった。
最初は、「こんなに切ってしまって大丈夫だろうか」と不安になるほど、スカスカになったように見えることもある。
しかし、時間をかけて一本一本の枝を見ながら選別し、風が通り抜けるように仕上げていく。
すると、込み合っていた木が、すっきりとした姿に変わっていく。
枯れてしまった枝や内部に溜まっていた枯葉なども取り除いていくと、木の状態が以前とは違って見えてくる。
翌年、新芽が出てくる様子を見ていると、剪定の仕方によって木の姿が変わっていくことを実感する。
表面を刈り込むだけだった頃と比べると、自然な樹形を残しながら木を整えることができるようになった。
手入れにはそれなりの時間と根気が必要だ。
しかし、この「透かし剪定」を覚えてから、庭木との向き合い方は大きく変わった。
3.古い家と庭の現実――ヤマモモとマキの巨大化対策
ヒイラギのような中木だけでなく、古い家の庭でさらに頭を悩ませるのが、屋根を超えるほどに大きくなった高木たちだ。
我が家の庭にあるヤマモモの木は、放っておけばぐんぐんと空に向かって伸び、気がつけば母屋の屋根の高さを軽々と超えていく。
立派といえば聞こえはいいが、古い家の庭において大きくなりすぎた木は、時にさまざまな問題を引き起こす。
その代表が、「落ち葉による雨樋の詰まり」だ。
ヤマモモの大量の落ち葉や細い枝が秋風に乗って屋根の上に舞い上がり、雨樋にどっさりと溜まってしまう。
そのまま放置して雨が降れば、雨樋から水があふれ、外壁を汚したり、建物への水の影響が心配になったりする。
クレーンを使わなければ手も足も出ないような高さまで放置してしまったヤマモモの木に対し、私たちは「いかにこれ以上大きくさせないか」という対策を考えなければならなかった。
4.高さを抑え、枝をコントロールする
ヤマモモのように成長力が旺盛な木をこれ以上大きくさせないためには、高さを一定のラインで抑え、横に広がる枝をコントロールする必要がある。
ただ上に伸ばすのではなく、枝分かれしている部分などを見ながら、これ以上高くならないように剪定していく。
また、家屋や道路側に大きく張り出してしまった枝は、周辺の安全や雨樋への落ち葉の影響などを考慮し、必要に応じて根元から落としたり、短く切り戻したりする。
マキの木なども同様だ。
古い家の庭で見かけるマキは、長年放置すると大きく成長し、自分で剪定することが難しい高さに達してしまうことがある。
だからこそ、「これ以上高い位置には行かせない」という高さを決めたうえで、定期的に枝を整理し、管理できるサイズを維持することが重要になる。
5.「大きくさせない」剪定がもたらす余裕
庭木は、放っておけば大きくなっていく。
それは植物として自然なことだが、人が暮らす自宅の庭では、ある程度のサイズに抑えて管理する必要がある。
「表面を刈り込むだけ」という方法から、内部の枝を丁寧に透かす方法へ。
そして、ヤマモモやマキのような高木は、自分で安全に管理できる高さを意識し、それ以上大きくさせない。
この「木を大きくさせない」という考え方と「透かし剪定」を身につけたことで、庭木の管理に対する感覚は大きく変わった。
以前は「手に負えない」と感じていた庭木が、自分の手で少しずつ整えられるようになった。
不格好になっていた木が、自分の手で少しずつ自然で美しい姿を取り戻していく。
その変化を実際に見ることができることも、庭仕事の大きな楽しみの一つだと思う。

