お金の知識がないと、お金の奴隷になる──金融リテラシー調査2022から見える日本の現実

ある日、友人のタカシが言った。「給料日が来ても、すぐにお金が消えていく。何に使ったかも覚えてないんだよね」。彼は30代半ば、正社員として働いているが、貯金はほとんどない。クレジットカードのリボ払いが膨らみ、将来への不安が募るばかりだ。

タカシのような人は、実は少なくない。金融庁が2022年に実施した「金融リテラシー調査」によれば、日本人の多くが「お金の知識」に課題を抱えていることが明らかになった。

金融リテラシーとは何か?

金融リテラシーとは、「お金に関する知識・判断力・行動力」のことを指す。たとえば、家計管理、貯蓄、保険、ローン、投資、老後資金の準備など、人生におけるあらゆる場面で必要となるスキルだ。

この調査では、全国の18歳から79歳の3万人を対象に、25問の金融知識テストを実施。その結果、正答率の全国平均はわずか56.5%だった。つまり、半分近くの人が、お金に関する基本的な知識を持っていないということになる。

若年層の「投資熱」と「知識不足」

特に注目すべきは、18〜29歳の若年層だ。コロナ禍をきっかけに、株式や投資信託などへの関心が高まっている一方で、金融知識の正答率は他の世代と比べても低い。SNSやYouTubeで「簡単に儲かる」といった情報に触れ、仕組みを理解しないまま投資を始めるケースも多い。

これはまさに、「お金の知識がないまま、お金に振り回される」状態だ。投資は本来、リスクとリターンを理解したうえで行うべきもの。知識がなければ、詐欺や損失のリスクにさらされる。

「知らない」ことが損失を生む時代

調査では、生活設計や老後資金の準備についても、知識と行動にギャップがあることが示された。たとえば、「老後の生活費にいくら必要か」を把握している人は全体のわずか約30%。また、「資産形成のために投資をしている」と答えた人は全体の約20%にとどまった。

一方で、金融教育を受けた人は、そうでない人に比べて正答率が高く、実際の行動にも良い影響を与えていることが分かっている。つまり、「知っているかどうか」が、人生の選択肢を大きく左右するのだ。

お金の奴隷にならないために

「お金の奴隷」とは、収入が増えても支出が膨らみ、借金に追われ、将来の不安に怯える状態を指す。これは、贅沢をしているからではなく、「知らない」ことが原因で起こる。

たとえば、クレジットカードのリボ払い。毎月の支払いが一定で便利に見えるが、実は高金利で、返済総額が膨れ上がる仕組みだ。これを知らずに使い続ければ、気づかぬうちに「借金地獄」に陥る。

また、保険商品や投資信託も、仕組みを理解せずに契約すれば、必要以上のコストを払い続けることになる。金融商品は「買って終わり」ではなく、「理解して選ぶ」ことが重要なのだ。

金融教育は「生きる力」

金融庁の調査では、約7割の人が「学校で金融教育を行うべき」と回答している。しかし、実際に教育を受けた人は少なく、特に社会人になってからの学び直しの機会も限られている。

だからこそ、私たちは自ら学ぶ姿勢を持つ必要がある。書籍、動画、セミナー、そして信頼できる情報源を活用し、「お金の仕組み」を理解すること。それは、単なる知識ではなく、「人生を自分で選ぶ力」になる。

まとめ:お金の主人になるために

タカシは最近、家計簿アプリを使い始め、リボ払いをやめ、つみたてNISAを始めた。「お金のことを知るって、こんなに安心感があるんだな」と笑う。

お金は、私たちの人生に欠かせない存在だ。だが、知識がなければ、それは「自由を奪う鎖」にもなりうる。逆に、知識を持てば、お金は「人生を豊かにする道具」になる。

お金の奴隷になるか、お金の主人になるか──その分かれ道は、あなたの“学ぶ意志”にかかっている。

出典:金融庁「金融リテラシー調査2022」

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