金融リテラシーとは?米国の最新戦略「Financial Inclusion 2024」を解説
2024年10月、米国財務省が発表した「金融包摂の国家戦略(National Strategy for Financial Inclusion)」は、すべての人が公平に金融サービスへアクセスできる社会の実現を目指す重要な政策文書です。本記事では、その要点をわかりやすく解説し、日本への示唆も交えて紹介します。
金融包摂(Financial Inclusion)とは?
金融包摂とは、すべての人々が安全で手頃な価格の金融サービス(銀行口座、クレジット、保険、投資など)にアクセスできる状態を指します。米国では約5500万人が「アンダーバンクト」とされ、経済的な不安定さや資産形成の機会損失が課題となっています。
国家戦略の4つの柱
① アクセスの拡大(Expand Access)
- 地域金融機関への支援強化
- デジタルバンキングの普及
- 銀行口座開設の障壁緩和
- 郵便局を活用した金融サービスの検討
② 金融教育と能力の向上(Enhance Financial Capability)
- 学校教育での金融リテラシー義務化
- 職場での金融教育プログラム
- 多言語対応の教育リソース整備
- 詐欺防止教育の強化
③ 公平な金融制度の構築(Promote Fairness and Consumer Protection)
- 代替的信用評価モデルの導入
- 差別的融資慣行の是正
- 金融機関の透明性向上
- CFPBによる監視体制の強化
④ データと研究の活用(Leverage Data and Research)
- 金融アクセスに関するデータ公開
- 政策効果の測定と改善
- 民間・大学との連携による研究促進
特定コミュニティへの焦点
戦略では、先住民、移民、農村地域、若年層・高齢者など、金融的に取り残されやすい層への支援が重視されています。文化的に適切なアプローチや地域密着型の支援が求められています。
政府と民間の連携
政府だけでなく、金融機関、フィンテック企業、非営利団体、教育機関などとの協働が不可欠です。特にフィンテックと地域金融の融合が、金融包摂の鍵とされています。
成果指標と今後の展望
銀行口座保有率の向上、クレジットスコア保有者の増加、金融教育の普及、詐欺被害の減少などがKPIとして設定されています。今後は年次報告書の発行と進捗監視が行われる予定です。
日本への示唆:制度と教育の融合が鍵
この戦略は、制度設計・アクセス・公平性・データ活用までを包括的に捉えています。日本でも、学校教育への金融教育の統合、地域金融機関の再評価、フィンテックとの連携、政策とデータの連動が求められます。
まとめ:金融はすべての人の権利
金融包摂は、経済政策にとどまらず、社会的包摂と民主主義の基盤です。金融リテラシーを通じて、誰もが安心して暮らせる社会を築くために、教育と制度の両輪が必要です。


