宝石の名前を持つ鳥
翡翠という鳥を知っていますか?鳥なのでヒスイではなくカワセミと読みます。
今日の夕方、久しぶりに川沿いの遊歩道をジョギングをしていたら、体長15センチほどの鮮やかなブルーの鳥が川上の方から川の中の雑草の茂みに止まるのを見た。と、同時にすぐ目の前で、望遠レンズのカメラを構えた70代後半くらいの白髪のおじいさんが土手にしゃがみ込んで、シャッターを切るタイミングを見計らっている姿が目に入った。私は心の中で、「おお~❕千載一遇のチャンス」と叫んでいた。
カメラとカワセミとの間は10mもなかったと思う、カワセミは滅多にお目にかかれないばかりか、カメラが趣味の人にとっては野鳥の中でも人気はトップクラスである。しかもこれ程の至近距離で撮影できるチャンスはなかなかないだろう。私は決定的瞬間の撮影に立ち会えると内心興奮していた。
しばらくすると、カワセミが水面に向かってダイブしたかと思うと小さな水しぶきを上げて、あっという間に川下の方へ飛び去っていった。それは瞬きしていたら見逃す程の一瞬である。
私が、望遠カメラを構えたまま放心状態のおじいさんに「すみません、今の撮れましたか?」と声をかけた、おじいさんが自信なさげに、先ほど撮影した画面を表示して確認すると青い羽をWの形にして今まさに水中へ飛び込もうとしている瞬間が、写っていたのだが、残念なことにピントが合っていなかった。
おじいさんは「あ~ツ もう少し…」と言いかけて、悲しそうな表情になった。
カメラには詳しくないので、技術的なことはよくわからないが、勢いよく水面に向かって飛んだ瞬間にカメラのレンズを鳥に向けるだけでも難しい上に、瞬間的にピントを合わせるのは手動では無理だろうと思う。連写機能や、自動でのピントを合わせる機能があって初めて撮影できるのではないだろうか。
川沿いの遊歩道には散歩やジョギングを楽しむ人が数十人はいたが、この美しい鳥の姿を目にしたのは、カメラを構えていたおじいさんと私だけで、わずか15センチ程の鳥の姿は、誰にも見えていなかったようだ。もし撮影に成功していたら、おじいさんにとって家族や親戚にも自慢できる素晴らしい写真になっていただろう。そして、カワセミが目の前にいることなど知らないし、関心もない人達にも見てもらいたかった。