うまい魚が安い理由
カワハギの刺身をその肝と醤油を混ぜ合わせた醤油で戴く、その身は透明で歯応えがあり肝の濃厚な味と合わさると絶品である。わたしは、どの刺身にも柚子胡椒を合わせるのだが、カワハギには肝を合わせるのが一番美味い。
カワハギには背ビレに並んで長い毒針があり、吊り上げると折り畳まれていた毒針を立てて威嚇してくる、毒針で刺されると危険なので真っ先にハサミで切り落とすか、波止場のコンクリートに打ち付けてポッキリと折ってから、魚の口から針を外す。
父親と波止場に魚釣りに行くとアジやスズメダイに混じってカワハギが釣れるのだが、父が言うには、カワハギは魚屋には売られていないとのことだった。当時は、カワハギは釣り人は食べるが店頭には並ばない雑魚であり、商品価値はなかったのだ、それが約40数年たった今では、よく知られた高級魚である。
多くの人に知られてい無い、認知度が低いために値段も付けられないような魚の味を釣り人だけが知っていたのだ。同様の扱いをされている魚を最近見かけた、その魚の名はホウボウである。鯛やヒラメと同じ陳列棚に体長30センチ程のホウボウが2尾で200円程で売られていた。これには地域差があるのかもしれないが、まさに雑魚扱いである。
それまで食べたことがなかったのだが、イタリアでは魚のスープを作るのにホウボウが使われているのを知っていたので刺身にして食べてみるとこれが美味い。刺身をご飯に乗せて熱いお茶をかけてお茶漬けにすると刺身から上品な出汁が出て箸が止まらない。
ホウボウには、他の魚には無い特殊な器官があって、腹に数本の足が生えている。扇型で鮮やかな色彩の胸ビレは広げると蝶のように大きい。文章で表現するには難しいので興味を持った方はググってその姿を見て欲しい。
店頭には養殖された魚も多いが、天然の魚はその種類があまりにも豊富で一般に認知されていない魚も多いのだろう。それ故に、価格の安い魚がイコール美味しくないとは限らないのだ。釣り人の食卓に上る魚のように、世間が発見していないだけで、実はとても美味しい魚がまだいるかもしれない。