川遊びと獲物

前回に引き続き、川遊びの思い出についてである。

母親の職場であった選果場(出荷前の果物の選別などを行うところ)の駐車場には、甲羅の長さが30センチ程あるスッポンが水を張った大きなタライに入れられていた。手足をには爪があり、口は尖った姿をしている。近所のおじさんが川で捕まえたようだ、不用意に触ろうとすると、首が長く伸びて、噛みつこうとする。指を噛まれると、噛み切られるてしまうというので、少し離れた所から、眺めるくらいだった。

川遊びでは、主な獲物はテナガエビかウナギなのだが、時に予想しないような大物を見かける事がある。ある日、護岸から川を覗き込むと、田んぼの水が川に注ぎ込む水深が50センチ程の浅い場所に、体長1m以上、胴回りが40センチ程もあるオオウナギがいた。友達数人としばらく眺めていると、どこの誰かは知らないが、バイクに乗った叔父さんがやって来て、そのオオウナギを見て驚いた。すると、おじさんは捕獲するための道具を撮りに自宅へ向かった。と、立ち会ったのはそこまでだった。後日、父親から「捕獲されたオオウナギが水族館へ送られた」との話を聞かされた。捕獲したおじさんの善良な行為を意外に感じたが、オオウナギにとっては幸運だったと思う。

ある日、自宅前の川にはいないと思っていた鮎を弟が網で捕獲してきた。友人達と数人で泳ぎ回る鮎を掬ったそうだが、自宅前の川に鮎がいるという話はそれまで聞いた事がなかったし、その後も鮎を見たり、誰かが釣ったり捕まえたりした話も聞いた事がなく。近隣に住む住民もいまだに、鮎の存在を知らないのではないだろうか。

また、ある日の朝、兄弟で潮が引いたばかりの川の中を歩いていると、浅瀬に取り残された体調が70センチほど、1キロ程あるスズキを見つけた。発見した時は、浅瀬に横向きになってわずかに鰓(えら)を動かしていた。私がその魚を片手に持って川の中を歩いていると、護岸の上から通りがかりのおじさんが声をかけてきた。おじさんがそのスズキを「もらってもいいか?」と言ってきたので迷わずあげることにした。

川で遊びたいのには理由があって、冷たい水の中に両脚を浸けて歩き回るので、夏場は特に涼しくて気持ちがいいのと、すばしっこい魚を網で追い回すのだが、なかなか捕まえる事ができずに、泳ぎ回ったり逃げ隠れする魚を、水しぶきを上げて全力で追い回している行為そのものが楽しいからだ。

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