川遊びに夢中だった頃

小学校低学年の私は、川遊びに夢中だった。夏休みのほとんどの時間は、川遊びに費やしていた。自宅前には一級河川が流れていて、海までの距離は約1キロ程。海が満潮になると、スズキ・ウナギ・テナガエビ・アユ・ボラといった海の魚が泳いで川を登ってくる。

私は友達と、Tシャツ、半ズボン、サンダル、手にはバケツと魚取り用の網を持った出立で、時間の許す限り川の中を歩き回っていた。

川遊びをしているのは、子供ばかりではない。ウナギを捕まえようとする大人もいて。その仕掛けは、塩化ビニールのパイプを水中に沈めたり、数十個の石を積み上げて石の山を作ったりしたもので、そんな財力も腕力もない小学生達は大人のいない時を見計らって、仕掛けにかかった獲物を拝借したりしていた。

川遊びを始めたきっかけは、年上の子供たちが捕まえたテナガエビを見たのが始まりだった。テナガエビはすばしっこく、なかなか捕まらない。水中の石の影からわずかにテナガエビの長い髭が見えると、テナガエビの尾の方からそっと網を近づけて、頭の方から手を使って網の方へ誘い込んで捕まえるのだ。

水難事故を心配する親からは、川で遊ばないようにたびたび注意されていた。満潮の時間帯は水位が増すと足がつかない深さになるため、水位が低い時間帯を選んで遊んではいたが、小学生が遊ぶ場所として安全な場所とは言えない。川には溺れる他にも、命を脅かす危険が潜んでいる。

ある時、学校で映画の上映会があった。たしか、2本立てだったと思うが、その内の一本は、川で遊んで足を怪我した子供が破傷風になり高熱を出して苦しんだ挙句、懸命の治療も虚しく亡くなるといったバットエンドの作品であった。注意喚起を目的とした作品なので、今思えば目的に沿った内容なのだが、ハッピーエンドの映画ばかり見ていたせいで、その映画を見てからトラウマになったのか、川に入るのが恐ろしくなった私はキッパリと川遊びを止めてしまった。

大人になった今でも自宅近くに流れる川を見ると、大人達に止めるように注意されながらも、テナガエビを追いかけた日々を思い出す。それは、忘れ難い、楽しかった記憶である。

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