給料は円、資産も円のままでいいのか?――これからの時代の個人資産防衛
「給料は円でもらう。貯金も円。生活費も円」
日本で暮らしている以上、それが当たり前です。
しかし、物価が上がり、海外から見た日本の価格が変わり、以前なら当たり前だった商品やサービスにも「高くなった」と感じる場面が増えてきました。
ここで考えたいのが、
「自分の資産や収入を、円だけに依存していて本当に大丈夫なのか?」
ということです。
これは「日本がダメになるから海外へ逃げよう」という話ではありません。
むしろ逆です。
日本に住みながら、日本円だけに依存しない。
日本にある価値を見直し、必要なら海外市場にもつなげる。
これからの個人の資産防衛には、そんな発想が必要なのではないでしょうか。
第1章 海外から見ると「日本は安い国」になっている
円安が進むと、日本人にとって海外の商品や旅行は高く感じられます。
一方、海外から日本を見ると、日本の商品や不動産、サービスなどが以前より安く感じられることがあります。
もちろん、「日本にあるものは何でも安い」という意味ではありません。
価格は為替だけで決まるものではなく、商品の希少性や品質、需要、地域などによって大きく変わります。
それでも、為替の変化によって日本国内の資産や商品が海外から注目されやすくなることはあります。
実際、訪日外国人の増加によって、日本の観光地や飲食店、宿泊施設などに海外からの需要が流れ込んでいます。
不動産などでも海外投資家の存在感が語られるようになりました。
こうした変化を見ていると、一つのことに気づきます。
価値は「日本国内だけ」で決まるものではない。
日本では中古品として扱われているものが、海外では別の価値を持つこともあるのです。
第2章 「円だけに依存する」ことのリスク
円で給料を受け取り、円で貯金をする。
それ自体が悪いわけではありません。
むしろ、日常生活のための現金や預金は必要です。
問題は、生活資金から将来の資産まで、すべてを一つの通貨、一つの収入源に集中させてしまうことです。
例えば物価が上昇しても、給料が同じペースで増えなければ、同じ金額のお金で買えるものは少なくなります。
100万円という数字が100万円のままでも、その100万円で買える商品やサービスの量が減れば、実質的な購買力は低下します。
これがインフレによる資産価値の目減りです。
だからといって、「預金を全部やめて投資をしよう」という話でもありません。
急な病気や失業、家電の故障など、すぐに使えるお金は必要です。
大切なのは、
現金を持つことと、現金だけに依存することを分けて考えること。
これが個人の資産防衛の第一歩です。
第3章 日本人が見落としている「隠れ資産」
ここからが、私が特に面白いと思っている部分です。
日本には、国内ではそれほど高く評価されていなくても、海外では需要がある商品が数多くあります。
例えば、
・昔のゲームや玩具
・フィルムカメラや交換レンズ
・着物、帯、古布
・日本の陶器や工芸品
・古い硬貨やコレクターズアイテム
・中古の工具や専門用品
・日本独自のデザイン雑貨
などです。
もちろん、古いものなら何でも売れるわけではありません。
「昭和のものだから高い」
「日本製だから海外で売れる」
という単純な話でもありません。
重要なのは、実際に海外で需要があるか、どの程度の価格で取引されているかです。
例えば、日本では数千円程度で売られている中古品が、海外では日本文化やコレクター需要によって、それ以上の価格で取引されることがあります。
逆に、日本では高価なものでも、海外では需要がなく、送料や手数料を考えると利益が出ないこともあります。
つまり、
「日本での価値」と「世界での価値」は同じではない。
ここに個人が利用できる可能性があります。
第4章 「日本は安くなった」を嘆くだけで終わらせない
円安を見て、
「海外旅行に行けなくなった」
「輸入品が高くなった」
と感じるだけでは、為替の変化に振り回される側になってしまいます。
一方で、
「海外から見た日本の商品はどう見えるのだろう?」
と考えてみる。
この視点を持つだけでも、見える景色が変わります。
例えば、越境ECを利用して日本の商品を海外に販売する方法があります。
いきなり大きなビジネスを始める必要はありません。
まず自宅にある中古品や、身近な日本製品を10個ほど選んでみる。
そして、
・海外でいくらで販売されているか
・実際の取引価格はいくらか
・送料はいくらか
・販売手数料はいくらか
・為替を考えると利益が残るか
・返品やトラブルのリスクはないか
を調べてみる。
ここまで調べて初めて、「これは海外に売れるかもしれない」という判断ができます。
重要なのは、いきなり仕入れないことです。
最初は「売る」より「調べる」。
この順番なら、大きなお金を失う可能性を抑えながら経験を積めます。
第5章 個人の資産防衛は「3つ」に分けて考える
ここまでの話を整理すると、これからの資産防衛は、単に「株を買う」という話ではありません。
私は、次の3つに分けて考えると分かりやすいと思います。
防衛線① 家計を守る
まずは毎月出ていくお金を確認します。
通信費、保険、サブスク、住宅費など、長期間にわたって支払っている固定費を一度見直してみる。
そして、急な支出に対応できる生活防衛資金を確保する。
資産運用を始める前に、家計そのものを安定させることが重要です。
防衛線② 資産を一つの通貨だけに集中させない
余裕資金については、現金だけではなく、株式や投資信託、金など、それぞれ特徴の異なる資産について考える方法があります。
例えばNISAは、一定の投資について税制上の優遇を受けられる制度です。
ただし、NISAそのものが「安全な資産」なのではありません。
中で購入する商品によって価格変動があります。
海外株式や全世界株式などに投資する場合も、為替変動や市場下落によって評価額が下がる可能性があります。
だからこそ、
「円預金か投資か」という二択ではなく、目的やリスクに応じて分散する。
これが基本になります。
防衛線③ 「稼ぐ通貨」を増やす
そして、意外と見落とされるのがここです。
資産を分散するだけではなく、収入源そのものを増やす。
会社からもらう給料だけではなく、
・イラスト
・デザイン
・文章
・動画制作
・プログラミング
・AIを使った制作
・翻訳
・専門知識
・ネット販売
・越境EC
など、自分の知識や技術を使って収入を得る方法を考える。
特にインターネットを使えば、日本国内だけでなく海外の顧客にサービスや商品を届けることも可能です。
もちろん、すぐに大きな収入になるわけではありません。
しかし、
「会社から円をもらう」以外の収入経路を一つ作る。
これは、投資とは違う意味での資産防衛になります。
第6章 今日からできる小さなロードマップ
ここまで読んで、
「結局、何から始めればいいの?」
と思った人もいるでしょう。
難しく考える必要はありません。
まずは次の順番で十分です。
STEP 1 自分の家計を確認する
毎月いくら使っているのか、固定費はいくらなのかを把握する。
STEP 2 生活防衛資金を確保する
投資や副業より先に、急な支出に対応できる現金を準備する。
STEP 3 資産の中身を確認する
預金、投資、その他の資産が、どの通貨・資産に偏っているかを確認する。
STEP 4 NISAなどの制度を調べる
制度を理解したうえで、自分の目的とリスク許容度に合う商品を検討する。
STEP 5 家にある「売れるかもしれないもの」を10個探す
古いカメラ、玩具、ゲーム、工芸品、コレクションなどを探してみる。
STEP 6 海外市場を調べる
国内価格だけでなく、海外で実際にどのくらいの価格で取引されているかを確認する。
STEP 7 小さく稼いでみる
最初から月10万円を目指す必要はありません。
まず「自分の知識やモノから、1円でも収入を生み出す」。
その経験が、次の収入につながっていきます。
終章 資産防衛とは「逃げること」ではない
「日本経済はこれからどうなるのか」
正確な未来を予測することは誰にもできません。
円高になる可能性もあれば、さらに円安が進む可能性もあります。
物価や賃金、株価、金価格も変化します。
だからこそ、「この未来が必ず来る」と決めつけて行動するのではなく、どんな変化が起きても対応しやすい状態を作ることが大切です。
給料が円だからといって、すべての資産を円だけで持つ必要はありません。
日本に住んでいるからといって、収入源を日本国内だけに限定する必要もありません。
そして、日本にあるものだからといって、その価値が日本国内だけで決まるわけでもありません。
日本には、世界から見るとまだ知られていない商品や技術、文化、工芸、コンテンツが数多くあります。
それらを「自分には関係ない」と考えるのではなく、
「世界ではどんな価値があるのだろう?」
と考えてみる。
資産を守る。
資産を分散する。
収入源を増やす。
そして、日本に眠っている価値を世界につなげる。
これからの個人の資産防衛は、単に「お金を守る」という話ではなく、自分が持っている資産・知識・技術を、より広い市場につなげることなのかもしれません。
「給料は円、資産も円」の状態を、今日すぐに変える必要はありません。
まずは、自分のお金がどこにあり、何に依存しているのかを知る。
そして、ほんの少しだけ別の選択肢を持ってみる。
それだけでも、将来への備えは変わってきます。

